
就職活動の支援に携わっていると、学生から「何から始めればよいか分かりません」「このままの進め方で合っていますか」「本当にこの企業を受けてよいのでしょうか」といった相談を頻繁に受ける。一見すると、こうした不安は情報不足に起因すると思われるかもしれない。
実際には、今日の学生は多くの情報に触れている。企業のウェブサイト、就活サイト、選考体験記、インターンシップ情報、動画コンテンツなど、就職活動に関連する情報は以前より格段に入手しやすくなっている。企業研究や選考対策を効率的に行う環境は整っているにもかかわらず、学生たちの不安は消えていない。むしろ、不安を抱えながら活動する学生が少なくないと感じる。
では、なぜ情報が増えているにもかかわらず不安は減らないのか。その理由の一つは、情報が増えたことで「正解」が見つかりやすくなったわけではないからだ。企業研究のノウハウ、自己分析の方法、面接対策のアドバイスなど、多くの情報が存在する。しかし、それらはあくまでも一般的なものである。
ある学生に有効だった方法が別の学生にも当てはまるとは限らない。ある企業で評価された経験が別の企業でも評価されるとは限らない。つまり、情報が増えても、自分にとっての正解は自動的には見つからない。
また、就職活動には将来に関する意思決定が伴う。どの業界を選ぶか、どの企業を受けるか、どのような働き方をしたいか。最終的に答えを出すのは自分自身である。どれだけ情報を集めても、「この会社に入れば必ず幸せになれる」という保証はない。どれだけ研究しても、「この選択が絶対に正しい」と言い切ることはできない。
だからこそ、人は不安になる。人生の重要な選択には常に不安がつきまとう。進学、就職、転職、結婚など、未来が見えない中で判断しなければならない。就職活動も同様で、情報を通じて企業を知ることはできるが、それだけでは不十分である。
企業の事業内容や仕事内容、社員の考え方や企業文化を理解することはできる。しかし、その企業が自分に合っているか、仕事にやりがいを感じられるかは、情報だけでは判断できない。それは個人の価値観や目標によって異なるからである。
ある学生にとって魅力的な企業が別の学生にとっても魅力的とは限らない。理想的な働き方も人それぞれである。就職活動には万人共通の正解は存在しない。選択肢や情報が増えたことで、「もっと良い選択があるのでは」と悩む機会はむしろ増えているかもしれない。
もちろん、情報収集は重要である。企業や仕事について知ることは納得のいく意思決定に欠かせない。しかし、情報の役割は正解を教えることではなく、自分自身が判断するための材料を提供することである。
就職活動で大切なのは、不安をなくすために情報を集め続けることではなく、必要な情報を得た上で自分なりの答えを見つけることである。情報が増えた時代だからこそ、情報に振り回されず、自分は何を大切にしたいのか、どのような働き方をしたいのかを考えることが重要である。(「内定塾」講師 齋藤弘透)
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