t>

神奈川県・鵠沼海岸にあるかき氷専門店「埜庵」は、真冬でも行列が絶えない人気店として知られる。しかし、店主は「かきいれ時の夏に店を閉めよう」という苦渋の決断を下した。背景には、娘の教育費捻出という現実的な課題と、長年抱えてきた価格高騰や人手不足のジレンマがあった。
店主は「行列が繁盛を意味しない」と語る。多くの客が訪れる一方で、一杯数百円のかき氷では利益を圧迫し、持続可能な経営が困難になっていた。そこに重なったのが原材料費の高騰とコロナ禍による売上変動。家族の将来を考えたとき、夏の繁忙期を一時的に休む勇気が必要だと判断した。
コロナ禍で苦境に立たされた同店は、テイクアウトや予約制の導入など工夫を重ねてきた。しかし、物価上昇と人件費増が続く中で、既存の営業スタイルでは限界を感じていた。「娘が大学に行く費用を考えると、このままでは無理だと思った」と店主は振り返る。
そこで選んだのが、夏場に店を閉め、冬場に集中する独自スタイル。一部の常連客からは「夏に食べられないのは寂しい」と声があがったが、店主は「長く続けるためには、この選択が正しかった」と確信している。冬のシーズンには、より深い味わいを求めた新メニューも投入し、品質向上に力を注ぐ。
結果として、「埜庵」は行列ができる店から、予約制でゆったり楽しめる店へと変貌した。常連客は冬の静かなひとときを好み、新規客はSNSで広がる評判を聞きつけて訪れる。店主は「無理せず、自分のペースで続けることが、結果的に多くの人に愛される道だった」と語り、今後の展望に期待を寄せている。