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JR東海は29日、エンターテインメントと東海道新幹線を組み合わせた旅行企画「推し旅」として、大阪市で上演されている坂本龍一さん(2023年死去)のピアノ演奏の複合現実(MR)作品「KAGAMI+」の観覧客を乗せた特別ツアーを実施した。参加した坂本さんのファン55人は、新幹線車内での演奏会や、現地での作品鑑賞を楽しんだ。
ツアー名は「坂本龍一|KAGAMI+ 貸切新幹線鑑賞ツアー」。参加者は東京駅日本橋口に集合し、のぞみ253号に乗車して、「KAGAMI+」が上演されている大阪市北区の文化施設「VS.」を目指した。
新幹線の車内は、さながらコンサート会場に。インドの太鼓「タブラ」のユザーンさん、音楽家の蓮沼執太さん、ギターの野口文さん、笙(しょう)の音無史哉さん、サックスの大谷能生、サウンドエンジニアの東岳志さんが登場し、セッションなどを披露した。車内のスピーカーからは、旅で聴きたい坂本さんの曲と題し「戦場のメリークリスマス」などが流れた。
ユザーンさんは、「坂本さんのファンが一堂に会し、車内で一緒に坂本さんの曲などを共通体験できた。演奏者もお客さんも楽しい時間だった」と笑顔を見せた。
上演会場の「VS.」では、MRを鑑賞するために、ゴーグル状のヘッドセットを装着。上演が始まると、目の前でに坂本さんが演奏しているかのような臨場感で作品を体験した。
東京都府中市から参加した池田真季子さん(55)は、「坂本さんに近寄れるような、現実と非現実を行き来する体験ができた。坂本さんの表情や手相まで見られた」と驚いた様子。小学生のころから坂本さんの音楽を聴いてきた池田さんは、喪失感が大きかったというが、「MRを見て、坂本さんに会えて、一歩前に進めた。また坂本さんの音楽を聴いていこうと思う。救われた気持ち」と笑顔をみせた。
東京都北区の栗原淑子さん(53)は「私は32年間のファン。(MRを見て)坂本さんがリアルで、言葉がでない」と感極まった様子だった。
会場では、作品を手がけた米映像会社「ティン・ドラム」の経営者兼ディレクター、トッド・エッカートさんも上演を見守った。エッカートさんは「感情があふれて涙を流す観客が多かった。参加者には、龍一とのつながりや絆を感じてほしい」としみじみ語った。
企画したJR東海営業本部法人営業グループの山口陽平担当課長は、「ツアーチケットは完売し、坂本さんの人気を実感している。車内で楽器演奏をしたり、音楽を流せるのは貸し切りだからこそできる。貸し切りのよさを引き出している企画」と話した。(文・写真 堀口葉子)