
旅情あふれる寝台列車は今なお多くの人を魅了している。ベトナムを縦断する統一鉄道の寝台列車旅は、タイパやコスパでは語れない魅力があり、日本とは違う非日常の体験が随所にあった。
筆者は一人で寝台列車に乗り込み、下段ベッドを予約していた。しかし、乗車後に他の乗客が「この下段は俺のものだ」と主張し始めた。ベトナムでは予約システムが必ずしも厳格ではなく、現地の習慣で下段は高齢者や女性優先とされることもあり、筆者は一瞬焦った。
結局、車掌が間に入り、予約票を確認して筆者の権利が認められた。だが、その間も他の乗客はジェスチャーで「交換しろ」と迫る。タイパ(タイムパフォーマンス)で見れば、このもめ事だけで貴重な時間を消費したのは確かだ。
「旅情はプライスレス」と筆者は振り返る。車窓から見える田園風景や地元の人々とのふれあい、列車内で売られるバインミーの香り――こうした体験は効率だけでは測れない。下段ベッドを巡る「バトル」もまた、ベトナムらしい生々しい記憶として残った。
日本の寝台列車とは異なるルールやマナーに戸惑いながらも、その混沌が旅の醍醐味だと気づかされた。タイパやコスパに縛られない旅こそ、本当の非日常を提供してくれるのだ。