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「世界のFUNAI」として知られた船井電機(大阪府大東市)が10月24日、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。給料日の前日に従業員約500人が一斉解雇され、波紋が広がった。2021年の出版会社による買収以降、約300億円の資金が流出したとみられる。
「20年以上勤めた船井のブランドがなくなってしまうことがショック。経営陣は社員に真実を話す責任がある」
ハローワーク門真が11日に開いた再就職支援説明会では、突然解雇された元従業員のため約800社、2千件の求人をまとめた冊子が配布された。
60年以上の歴史を持つ老舗メーカーとしては異例の破産劇で、10月24日午後に弁護士から約500人の従業員へ破産と一斉解雇が伝えられた。
船井電機のような規模の会社が民事再生法や会社更生法による再建を選ばず、準自己破産の手続きをとるのは極めて珍しい。帝国データバンクの担当者は「企業のノウハウも人材も散逸してしまう。大企業でこのようなケースは見たことがない」と驚きを隠さない。
破産申立書によれば、2021年3月末時点で約347億円あった現預金は、今年10月の給与支払い後に1千万円を下回る状態にまで減少していた。
船井電機は2021年5月、秀和システムホールディングス(HD)に買収され非上場化。創業家は再建を期待して秀和代表の上田智一氏を社長に迎えた。
上田社長は「事業の多角化」を掲げ、2023年4月に脱毛サロンのミュゼプラチナムを買収したが、約1年後の2024年3月に売却。その後、不可解な動きが表面化する。
5月から役員の入れ替わりが相次ぎ、9月にはミュゼの広告代未払い(約22億円)が発覚。上田氏は同月27日に社長を退任し、9月末には工場操業が停止していた。
破産申立書では、船井電機から持ち株会社経由でミュゼなどに約300億円が貸し付けられ、それが破産要因とされる。ミュゼ買収には横浜幸銀信用組合の融資、秀和の買収資金にはりそな銀行の融資があり、後者は船井電機の預金を担保に回収された。
M&Aに詳しい公認会計士の久禮義継氏は「買収の手段の一つで、スキーム上、特に不自然なところはないように見受けられる」と話す。ただ、船井電機が持ち株会社に約253億円を貸し付けていたことについて「グループ全体を統括する持ち株会社が子会社に貸し付けるのが普通。金額もきわめて多額で、違和感がある」と指摘する。
中央大の青木英孝教授(企業統治)は「単なる事業の失敗か、何らかの不正があったのかを外部から判断するすべはないが、買収にあたって船井側は秀和をよほど信じていたんだろう。いざというときにブレーキを効かせる手段を考えておくべきだった」と述べた。
船井電機の起源は1951年に船井哲良氏が創業したミシンの卸問屋で、1961年にトランジスタラジオの製造部門を独立させ設立された。
1985年に発売したテレビとビデオデッキ一体型の「テレビデオ」がヒットし、事業拡大の転機となった。
低価格と高機能で販売を伸ばし、米ウォルマートとの提携で1990年代後半から2000年代にかけて北米シェア60%超を獲得した。
しかし中国メーカーの台頭で価格競争が激化し、売上高は一時4千億円近くまで達したが、営業赤字が常態化した。
創業者の哲良氏はFUNAIブランド復活を目指し、ヤマダ電機との提携を主導。2017年7月に亡くなる直前まで経営に関わった。
2021年5月の秀和による買収はテレビ事業からの脱却を目指したが、わずか3年半で破産に至った。(桑島浩任)
今回のケースは、経営戦略の失敗か「吸血型M&A」か外部から判断しにくい。出版社による家電メーカー買収の合理性にも疑問が残る。
根本的な問題として、日本の企業が買収額を上回る現預金を抱え、安く評価されている点がある。買収側にとっては現預金だけで利益が出るため、再建のインセンティブが働かない。
創業家が全株式を売却せず、一部を保有して経営に関与すべきだった。丸投げした結果、危機に際して対抗手段を失った。(聞き手 桑島浩任)
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