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LINEヤフー前会長・川邊健太郎氏が、インターネット産業30年の激動を描いた初の著書を上梓した。その中で特に注目を集めているのは、日本のキャッシュレス市場を根底から覆したPayPayの誕生と、100億円規模のキャンペーンに至る狂気と野望のドラマだ。川邊氏はこの本の中で、競合との死闘やソフトバンクグループ総帥・孫正義氏の圧倒的な決断力を赤裸々に綴っている。
PayPayは2018年、ソフトバンクとヤフー(現LINEヤフー)の合弁としてスタートした。当時すでにLINE Payや楽天ペイなどが先行して存在したが、川邊氏は「キャッシュレス普及率を一気に跳ね上げるには、桁外れのインパクトが必要だった」と振り返る。そこで打ち出されたのが、100億円を投じた「100億円キャンペーン」だった。ユーザーに還元されるポイントは通常の常識を超え、業界内外から「狂気の沙汰」とさえ言われた。
このキャンペーンを推進したのが、ソフトバンクの孫正義氏である。当時、競合のLINE Payも大型キャンペーンを仕掛けており、両社の消耗戦は激化の一途をたどった。川邊氏が孫氏に相談したところ、孫氏はこう言い放ったという。孫正義「上等だよ。どっちかが潰れるまでやってやるよ」。この一言が、PayPayの全面対決の号砲となった。
実際、100億円キャンペーンは予想をはるかに超える反響を呼んだ。開始直後からサーバーがダウンし、利用者が殺到。キャッシュレス決済の認知度は急上昇し、日本の消費行動を一変させた。ただし、その代償も大きく、巨額の広告費がソフトバンクグループの財務を圧迫した時期もあった。川邊氏は著書で「戦略的な狂気がなければ、市場を動かせなかった」と結論づけている。
この著書は、単なるビジネス成功譚ではない。内側から見た決断の連続、葛藤、そして人間ドラマが生々しく描かれている。特に孫正義氏の「上等だよ」という言葉は、起業家や経営者にとって、競争の本質を問いかける教訓として長く語り継がれるだろう。日本のキャッシュレス革命の裏側にあった狂気と野望の大河ドラマの結末は、ぜひ本書で確かめてほしい。