t>

「日本から一番近い外国」といえば韓国。ドラマや伝統料理、日韓の歴史を思い浮かべる人も多いだろう。首都ソウルでは今や国内旅行と同じ感覚で美容、グルメ、ショッピングを楽しむ日本人観光客が多い。だが、韓国の知られざる魅力は地方にこそある。ソウルから100キロ以上離れた韓国中部の地方都市を訪ねると、首都のにぎわいとは一線を画す、まだ見ぬ韓国が広がっていた。2回に分けて紹介する。
大型連休の混雑も落ち着いた5月末、旅の玄関口となる韓国中部・忠清北道(チュンチョンブクド)の道庁所在地・清州(チョンジュ)市の空港に降り立った。
「『道』は韓国の行政単位で、日本の都道府県にあたります」。ガイドの高仁淑(コインスク)さんが教えてくれる。
清州は4~6世紀、韓国の三国時代に百済の軍事・交通の要衝として栄えた。ソウルから約140キロ離れていることもあり、現在はのどかな雰囲気が漂う。期待に胸を膨らませ、市街散策に乗り出した。
まずは市民の台所、清州ユッコリ総合市場へ。サッカー場15面分の敷地に、日用品や生鮮食品を扱う約1200店舗が軒を連ねる。かつてこの地に、六叉路(ユッコリ)があったことから、名づけられたという。
「イルボン?(日本人かい?)」。市場のアーケードを歩くと、キムチや果物などを売る店主が声をかけてくれる。聞けば、お土産を求めて日本人観光客も多く訪れるのだとか。人気はやはり韓国のり。「マシッソ(おいしいよ)」と笑う店主らにつられて、思わず財布のひもが緩みそうだ。
市場を後にし、昼食に選んだのは、高麗人参やナツメなど漢方食材とともに、丸鶏1羽を煮込んだ伝統料理の参鶏湯(サムゲタン)。スープを一口飲めば、優しい味わいが体にしみわたる。
「日本では夏にうなぎを食べますよね。韓国では夏の間、参鶏湯を食べると元気に過ごせるといわれています」と高さん。韓国では定番の滋養強壮メニューなのだという。
おなかを満たした後は、歴代大統領の別荘だった青南台(チョンナムデ)に向かった。南にある大統領府「青瓦台」だから青南台。湖を望む山間の広大な敷地に、大統領家族が宿泊した本館やゴルフ場、ヘリポートなどを備える。総面積は甲子園球場47個分にあたる約183万平方メートルにのぼり、圧巻だ。
1960年代から80年代後半まで続いた軍事政権下、80~88年まで政権を握った全斗煥(チョンドゥファン)元大統領が建設を主導し、83年に完成。2003年、当時の盧武鉉(ノムヒョン)大統領が国民に開放するまで、5人の大統領がこの地でつかの間の休暇を過ごした。
建設工事は厳戒態勢で行われ、近くの街から建設作業員を運ぶバスには目隠しが施されたという。その中で建設された本館は現在、見学コースとなっており、大統領夫妻の寝室や執務室が当時の姿のまま残される。
本館近くでは、5人ゆかりの品々を見学できる。自然散策が好きだった盧武鉉氏は自転車、ゴルフ好きの盧泰愚(ノテウ)氏(在位1988~93年)は愛用のクラブが展示され、それぞれの人柄を物語る。
激動の時代を象徴する青南台。歴史の息遣いが感じられるこの場所を一度、訪れてみてはいかがだろうか。(取材協力 韓国観光公社)
韓国中部・忠清北道の道庁所在地。関西国際空港からは、韓国の格安航空会社(LCC)のエアロKが清州空港とを結ぶ直行便を運航しており、2時間程度。市域には、歴代大統領が利用した別荘「青南台」のほか、日本でも知られる俳優のペ・ヨンジュン氏が主演した韓国時代劇「太王四神記」の撮影場所「上党山城(サンダンサンソン)」などの観光地がある。