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四半世紀前に市場から消えたクルマが、再び注目を集めている。アウディが開発を進めているとみられる新型『A2 e-tron』のプロトタイプが、厳重なカモフラージュをまとった姿でテスト走行を開始した。捉えられたシルエットからは、かつて「早すぎた名車」と評された初代A2の面影が確かに浮かび上がる。
初代A2がデビューしたのは2000年のこと。当時のコンパクトカーとしては異例の先進技術を投入し、自動車業界に衝撃を与えた。アルミニウム製スペースフレームによる徹底した軽量化、空気抵抗を削ぎ落とすボディデザイン、高効率なパワートレイン、そしてコンパクトな外観からは想像もつかない広い室内空間。環境性能と実用性を高い次元で両立させようとした設計思想は、今のEVづくりと驚くほど通底している。
だが、その先進性は商業的な成功には結びつかなかった。アルミボディによる製造コストの上昇は販売価格に跳ね返り、一般的なコンパクトカーより割高な価格設定を余儀なくされた。当時の市場は燃費や環境性能よりも、価格やデザインを重視する傾向が強かった。技術的には高く評価されながらも販売は振るわず、A2はやがて歴史の陰に消えていく。
それから約25年。自動車業界を取り巻く状況は一変した。電動化の波が押し寄せ、軽量化や空力性能、エネルギー効率の重要性はかつてなく高まっている。A2が半歩先にめざしていたコンセプトは、いまや自動車開発の常識だ。そうした時代の変化が、かつての異端児を再び表舞台に引き上げようとしている。新型A2 e-tronは、単なる車名の復活ではない。初代の設計思想をEV時代に合わせて再構築する、意欲作となる可能性を秘めている。
今回捉えられたプロトタイプには、初代A2をほうふつとさせる特徴が随所に確認できる。ホイールを車体の四隅に配置したパッケージング、後方へ滑らかに伸びるルーフライン、ルーフスポイラーで上下に分割されたリアガラス。市販モデルでは最新のアウディらしいライティングデザインやフロントマスクが採用されるとみられるが、「効率を追求したハッチバック」という基本コンセプトはしっかり受け継がれそうだ。
動力面では、フォルクスワーゲン・グループの最新EV技術が投入される見込みだ。採用されるとみられるのは新世代の「MEB+」プラットフォームで、VW『ID.3 Neo』と共通のアーキテクチャ。リアモーターを基本としたEV専用設計となり、現時点では最高出力168hpから228hp級のモーターと、50kWhから79kWhのバッテリーの組み合わせが報じられている。初代A2が重視した「効率」の思想を継承するなら、新型でも軽量化と空力性能の向上は開発の大きな柱になるはずだ。空気抵抗を抑えたボディと軽量な車体を実現できれば、同じ容量のバッテリーでも航続距離や電費性能で明確な優位性を発揮できる。
EV市場ではいま、航続距離そのものだけでなく、エネルギー効率の高さも商品力を左右する重要な指標となっている。約25年前にA2が追求した思想は、時代を経てようやく受け入れられる土壌が整ったともいえる。
価格はVW ID.3より上位に設定される見込みで、アウディらしい質感や先進装備を備えたプレミアムコンパクトEVとしての立ち位置が予想される。正式発表は今秋にも行われるとみられ、注目はすでに日本市場への導入可能性にも集まっている。現時点でアウディジャパンからの正式なアナウンスはないが、グローバルモデルとして展開されるのであれば、日本への導入も当然視野に入ってくるだろう。
「早すぎた名車」は、EVとして約25年ぶりの再出発を果たすのか。かつて時代の先を行きすぎたA2の設計思想が、いまの時代にようやく追いついてきた——そんな評価が定着するかどうかは、まもなく明らかになる。