
ロシアによるウクライナ侵略や台湾海峡情勢の緊迫化を受け、国家安全保障戦略など「安保3文書」の年内改定に向けた議論が政府・与党内で本格化している。非核三原則の見直しを含む日本の核戦略の方向性や、防衛力強化の具体的な内容が焦点となる中、政府が4月に設置した有識者会議のメンバー、筑波大教授の東野篤子氏が国際情勢の変化を踏まえた今後の展望を語った。
東野氏は有識者会議の議論に先立ち、安全保障環境の根本的変化を指摘。特に武器輸出管理の枠組みが「入り口管理」から「出口管理」へと移行した現状を挙げ、日本国内の平和主義意識の偏りを問題視している。戦闘中の国への殺傷能力のある武器輸出を制限する現行ルールの矛盾点を鋭く問いかける。
「これまでは入り口管理で制限してきたが出口管理になった。その入り口を撤廃したら即座に日本は『死の商人』になってしまうという反応が思った以上にあった。それなのに、ロシアに接近し、エネルギーを買うとウクライナ人を殺傷する兵器の資金になるかもしれないことへの想像力は薄い。平和主義を語る倫理感覚が偏っている」
「個人的には、ウクライナの人々の生活と命を守るために防空ミサイルを輸出すべきだと思う。しかし5類型撤廃後も、日本との間で防衛協力協定を持たず、かつ戦闘中の国への殺傷能力のある武器の輸出は改定後のルールでは難しい。防空ミサイルはロシア人の殺傷ではなく迎撃が目的だ。制度上の縛りは理解するが、それで本当に平和国家といえるのか。人の命を救う視点で考えられないことに疑問を抱いている」
東野氏の指摘は、防衛力強化と外交政策の整合性が問われる安保3文書改定の核心を突く。エネルギー調達と安全保障のトレードオフ、そして武器輸出ルールの倫理的矛盾が、今後の日本の平和国家像を揺るがす可能性がある。