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夏らしい青空が戻ってきた。田んぼの中を走り続けた2両編成のディーゼルカーが、静かにホームに滑り込んだ。乗降客はいない。「ファン」-。山々に警笛音をこだまさせ、次の駅へ向かった。
小湊鉄道は、千葉県内房線の五井駅から上総中野駅間を結ぶ全長39.1キロの単線。全18駅のうち10駅が無人駅。列車は冷房化されているが全線非電化で、ラッシュ時でも1時間に3本しか運転しないローカル線だ。
大正14年に開業。昭和48年には430万人を記録した乗客数も、マイカーの普及や沿線の過疎化などで、昨年度は153万人まで減少している。
全駅に切符の自動販売機はなく、車掌が車内で切符を販売することで、人材の活用と経費削減に努力してきた。
同鉄道鉄道部運輸課の中村満義さん(69)は「近代化に乗り遅れたのではなく、昔の鉄道情緒を大切に守り通しているんです」と話す。幸いにもバス事業が好調なため、今のところ廃止の声は聞こえてこないという。
「緑のじゅうたんを走る姿はきれいでしょう」。撮影のため田んぼの中で待っていると、農作業を終えた美園静江さん(81)が話しかけてきた。8月下旬には早場米の収穫が始まり、沿線は一足早い実りの秋を迎える。
昔ながらの古い木造駅舎が多く、硬券切符もいまだに発売している。テーマパークのような鉄道情景を求めて、観光の乗客も増えてきているという。小湊鉄道は、沿線住民と「時代の香り」を乗せ、2本のレールを走り続けている。