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国産の製品を世に送り出そうとする企業が存在する。その名はCIO。スマートフォンやPC向けの小型充電器、モバイルバッテリーなどを自社で企画・開発する同社は、中国などに現地法人や子会社を置き、現地サプライチェーンと連携して製造を行ってきた。そんなCIOがなぜ今、国産に挑むのか。7月1日のイベントでその理由が語られた。
CIOは設立10年目を迎えた。雑居ビルの一室で1人立ち上げた時代から、今や多くのユーザーに支えられる企業へと成長した。これまで「日本企業だから応援する」「いずれは日本でモノづくりを」といった期待の声がユーザーから多数寄せられていた。
しかし、CIO代表取締役の中橋翔大氏は、アサヒ電子を訪問した際のYouTube動画で、同社社長の菅野寿夫氏による次の発言に同意を示している。
“われわれは、モノづくりをしてる人間なので、こんなこと言っちゃいけないんですけど、メイドインジャパンって飯食えないんですよ”
単に「日本製」という愛国心に訴え、価格が従来の2倍や3倍になれば、ニッチな市場に終始する。一人一人の身の回りにCIO製品があふれる世界は実現できないという厳しい認識だ。
この現実の中でプロジェクトが動き出す大きなきっかけは、モノづくりYouTuberのイチケン氏との出会いだった。7月1日の発表会で中橋氏は、2025年7月に発売した充電器をイチケン氏が分解・検証し、サーマルスロットリングによる電力降下で発熱するという厳しい指摘を受けたと明かした。この動画は話題になったが、CIOは真摯に向き合うチャンスと捉え、ユーザーの実需に気づいたという。
中橋氏はアサヒ電子との会談で、ユーザーの国産への期待と熱設計・安定性への要望を掛け合わせ、妥当なコストバランスを保ちつつ、見た目にも心をくすぐる高いビルドクオリティーを追求すると語っている。
現在、国産充電器プロジェクトはパートナー企業の開拓と部品の国産化で大きく前進している。
中橋氏によれば、国内の製造委託先探しは困難を極めた。約30社の国内工場に声をかけたが、話を聞いてくれたのはわずか3社程度。設計は日本でも量産は中国、あるいは1日の生産台数が合わないといった理由で実現は難しかった。しかし、福島県で40年近くモノづくりを続けるアサヒ電子と出会うことができた。
CIOはアサヒ電子と約4カ月にわたる綿密な交渉を経て、製造委託の基本合意に至った。
アサヒ電子はISO9000番台の品質管理体制を持つ。同動画で同社担当者は、壊れた原因を追究する品質改善のサイクルや、物を無駄にしない精神を重視し、これらが長期的なコスト低減と信頼性向上に最も効くと説明した。中橋氏も同意し、価値観を共有できるパートナーとなっている。
イチケン氏は実際の製造ラインを見た知見を得るため、中国の工場に赴き連携方法を確認したという。中橋氏とイチケン氏の対談によると、プロジェクト開始当初、充電器の中身は日本の部品が0%だった。USB充電器向け小型部品はサイズ制約が厳しく、価格や納期面でサンプル調達に3カ月かかるなど、壁が立ちはだかった。
しかし、イチケン氏の紹介で、長野県にマザー工場を構える抵抗器メーカーのKOAやルビコンなどとの連携が始まった。7月1日の発表会ではKOA社長の有賀善紀氏からのメッセージが代読され、「車載市場で培った高い品質と信頼性を、身近なUSB電源でも安心してご使用いただけるものと考えている。挑戦のパートナーとして支援したい」との力強い意向が示された。
こうした取り組みの結果、発表会で示された資料によれば、現在は最大約59%の部品を日本メーカー製で占めるまでに進展した。
今後の国産充電器プロジェクトは3つの展望を持って推進される。中橋氏がYouTube動画で言及したように、国内の人手不足や初期コストといった厳しい現実があり、最初から全工程を日本で行うのはリスクが高く困難だ。
そこでまず、中国工場が担う工程と分け、日本人の細かさや慎重さが生きる組み立て、すなわち液晶の取り付け以降の後工程を日本のアサヒ電子へ移管してスタートさせる。将来的には部品調達の国内化が進むにつれ、SMT(表面実装)などの前工程も日本で行い、設計段階からアサヒ電子と共同で品質を作り込む計画だ。
CIOはアサヒ電子と中長期的なパートナーシップを築いていく。7月1日の発表会で流されたビデオメッセージで菅野社長が語ったように、「日本でしか生まれない価値を一緒に作るニューファクトリー」を目指している。
このプロジェクトの成果として、新ラインアップ「NovaPort III」シリーズの第1弾「NovaPort DUOIII 65W2C」がリリースされる予定だ。
最大の挑戦は、妥当なコストバランスを維持しながら日本の高い品質を量産ラインで実現することだ。イチケン氏が中国の製造現場で目撃したような勝手な部品変更リスクを排除するには、品質改善のサイクルを確実に回せる国内工場の存在が不可欠であり、アサヒ電子はその要求を完全に満たす。
液晶取り付け以降の後工程を日本国内へ移管することで、最終製品の品質はより確かなものになる。KOAなど信頼性の高い国内メーカー製部品を約59%組み込んだ回路設計は、かつて指摘された電力降下や異常な発熱といった問題を根本から解決する。ユーザーが真に求める安定性がここにある。
CIOはYouTubeを介したオープンな情報発信を続け、製造プロセスの透明性を担保する。これは従来のメーカーが隠しがちだったコストの壁や開発の失敗を、あえてユーザーと共有する試みだ。不特定多数の読者やユーザーが開発の裏側を知ることで、製品への執着と信頼はさらに強固になるだろう。
7月1日の発表会で組み立てパートナーとして紹介されたアサヒ電子で組み立てられ、日本の技術が詰まったNovaPort IIIシリーズは秋頃に市場へ投入される。国産充電器の誕生は、日本のモノづくりの可能性を再び広げる。この新たな挑戦が市場、そして次世代のスタンダードとなるのか、注目したい。