
衆議院に小選挙区比例代表並立制が導入され、最初の総選挙が行われてから今年で30年の節目を迎えた。この間、日本政治は政権交代や政党の離合集散を繰り返してきたが、果たして有権者は現在の仕組みをどう評価しているのか。朝日新聞社が実施した全国世論調査(郵送)の結果からは、国民が抱く複雑な本音が透けて見える。
望ましい衆院の選挙制度について3つの選択肢で尋ねたところ、「小選挙区中心」との回答が52%に達し、過半数を占めた。これに対し、かつての制度に近い「一つの選挙区から複数当選者が出る中選挙区中心」は28%、「比例代表中心」は12%にとどまった。30年という歳月を経て、一対一の対決構図を軸とする小選挙区制が、有権者の間に一定の定着を見せている実態が裏付けられた形だ。
しかし、今回の調査結果には非常に興味深い「ねじれ」も見て取れる。有権者の多くが「小選挙区中心」の制度を支持する一方で、政党の枠組みについては「3つか4つくらいの政党にまとまる」多党制的な状況を好む傾向が示されたからだ。制度の入り口(選挙制度)では二大政党制を促しやすい仕組みを選びながら、出口(結果)としての勢力図には多様性を求めるという、一見すると矛盾した民意が浮かび上がっている。
政治学の定説に照らせば、小選挙区制は大きな政党に有利に働き、必然的に二大政党化を促す装置である。一票でも多く獲得した候補者が議席を独占するこの制度下では、中規模・小規模な政党は議席獲得が難しく、勢力は集約されていく。有権者が「多党制」を理想としつつ「小選挙区」を支持するという現状は、学術的な整合性を欠いた、極めて日本的な政治意識の表れと言えるかもしれない。
かつて「政治改革」の旗印の下で導入された現行制度だが、それが当初期待された「緊張感ある政権交代」や「政策論争の深化」を十分に実現できているかについては、今なお議論が絶えない。今回の調査結果は、制度の定着を物語ると同時に、理想の政治体制をいまだ模索し続ける有権者の迷いを象徴している。30年という月日を経て、我々は改めて、民主主義の「器」である選挙制度のあり方を問い直すべき時期に来ているのではないだろうか。
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