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健康寿命の延伸や医療費削減が課題となる中、病気になる前の「未病」段階での健康維持が重要視されている。ロート製薬は食品や自然素材を通じたセルフケアに着目し、東南アジア最大級の漢方薬メーカー「余仁生(ユーヤンサン)」を活用して中国伝統医学「中医学」に基づく商品開発を進める。日本人の健康管理に向けた新たな提案として注目を集めている。
昨年2月に閣議決定された「健康・医療戦略」は「未病」を「健康か病気かという二分論ではなく健康と病気を連続的に捉える考え方」と定義。自治体や企業でも未病対策の取り組みが広がりつつある。
こうした流れを受け、ロート製薬は国内で今年3月からサプリメント「余仁生 冬虫夏草(とうちゅうかそう)」など4製品の販売を順次開始した。日々の体調管理やコンディション維持を目的とし、昆虫に寄生するキノコ「冬虫夏草」や高級食材「ツバメの巣」など、中医学で古くから用いられる素材を活用している。
まずはECサイトを中心に展開し、消費者の声を反映しながら商品ラインナップを拡大する方針だ。また、ロート製薬が運営するレストランでは、食養生をテーマに冬虫夏草を使用したメニューを期間限定で提供し、体験型の接点づくりにも乗り出している。
ユーヤンサンは1879年創業のシンガポール企業で、中医学に基づく漢方薬や健康食品の製造販売、クリニック運営を手がける。マレーシアでは鶏を丸ごと煮出した滋養食品が受験生向けに定着するなど、生活に根差した「活力食」として浸透している。
ロート製薬は2024年に三井物産と共同でユーヤンサンを買収。ロート製薬の担当者は「幅広い観点で生活者の健康に寄り添ってきたことが強み」と評価する。
同社は薬物治療だけに依存せず、食習慣などを通じた健康づくりを促す「薬に頼らない製薬企業」を目指す。スキンケアや医薬品に続く「第3の柱」として食事業を育成し、内服・食品事業の売上高を24年度の494億円から30年度に800億円以上へ引き上げる目標を掲げる。
調査会社の富士経済によると、国内セルフヘルスケア市場は24年時点で7兆6840億円、30年には24年比6・1%増の8兆1510億円に拡大する見通し。ロート製薬の担当者は「コロナ禍以降、日々の体調を整えたいという意識が広がり、未病への関心が高まっている。疲労軽減や活力向上への需要も強い」と分析する。
未病段階のヘルスケアでは行政の動きも活発だ。「未病の改善」を掲げる神奈川県は生活習慣やストレス、認知機能などを数値化する「未病指標」を導入。未病関連の商品やサービスを認定する制度も設け、関連産業の育成を後押ししている。
医療と日常生活の間を埋める新たな産業として、未病に対応した取り組みが社会にどこまで浸透するかが今後の焦点となりそうだ。