
メキシコを代表する世界遺産「テオティワカン遺跡」で20日、男が観光客に向けて銃を乱射する事件が発生した。地元当局やAP通信の報道によると、この乱射によりカナダ人女性1人が死亡し、子供を含む13人が重軽傷を負った。犯行に及んだ男はその場で自ら命を絶ったとされており、平和な観光地は一瞬にして惨劇の場へと変わった。事件当時、現場には多くの外国人観光客が訪れており、周囲は一時パニック状態に陥ったという。
銃撃が発生したのは午前11時半ごろで、現場は遺跡内でも特に人気が高い「月のピラミッド」の上だった。負傷者には6歳の子供から61歳の高齢者まで含まれており、国籍別では米国人6人、コロンビア人3人などが確認されている。幸いなことに、在メキシコ日本大使館などの確認によれば、日本人が被害に遭ったという情報は入っていない。負傷者の多くは銃弾による負傷のほか、混乱の中で避難しようとした際の転倒などでも怪我を負った。
地元当局は事件を起こした人物を、メキシコ出身のフリオ・セサル・ハッソ・ラミレス容疑者(27)と特定した。現場の遺留品からは、犯行に使用された銃器のほかにナイフなども発見されており、強い殺意を持って現場に現れたものとみられる。当局の初期捜査では、組織的な犯行ではなく容疑者単独による行動との見方が強まっている。動機の解明が進められているが、容疑者が死亡しているため、全容解明には時間を要する見通しだ。
テオティワカン遺跡はメキシコ市から北東に位置し、古代文明の息吹を今に伝えるアメリカ大陸最大級の遺跡群である。特に「太陽のピラミッド」と「月のピラミッド」は観光の目玉であり、世界中から年間数百万人もの旅行者が訪れる。しかし、今回のような凄惨な事件が起きたことで、観光地としての安全管理体制を問う声が上がっている。メキシコ政府は、主要な観光スポットにおける警備を強化する方針を示している。
今回の事件は、メキシコが共同開催国となっているサッカー・ワールドカップの開幕を6月に控える中で発生した。メキシコ市内にも試合会場が設置される予定であり、大会期間中にはさらなる人出が見込まれている。世界中が注目するスポーツの祭典を前に、治安の悪化を懸念する声が国内外で急速に高まっている。当局は国際的な信頼を回復するため、速やかな事態の収拾と再発防止策の徹底を迫られている。
No Comments