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W杯で“消されたロゴ” リーバイス、ハインツが仕掛けた「制約」を味方にするブランド戦略

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Kenji Watanabe
経済 - 06 7月 2026

2026年FIFAワールドカップ(W杯)の裏側で、ビジネス界が注目する面白い出来事が起きている。W杯には「公式スポンサー以外の会社は、スタジアムにロゴを出してはいけない」という厳しいルールがあり、そのため関係のないブランドのロゴは白い布で覆われたり、黒いテープで隠されたりする。

普通なら、自社のロゴが隠されることは企業にとってマイナスのはずだ。しかし、米Levi Strauss & Co.(リーバイス)や米H. J. Heinz Company(ハインツ)といった世界的なブランドを持つ企業は、この「隠された状態」を逆手にとって成功した。高いお金を払った公式スポンサー以上に、世界中で「面白い!」と大きな話題をさらってしまったのである。

隠されたことで、かえって「あれは何だろう」と人の目が向く。これらの企業はその違和感を、自社らしい話題に変えたのだ。

このエピソードは、単なる面白いアイデアだけでは終わらない。値上げの発表やサービスの変更、店舗の閉店など、顧客に「言いにくいこと」を伝えなければならない場面はたくさんある。そんなピンチのときに、逃げずに「その会社らしいユーモアや誠実さ」を見せることで、かえってファンを増やすことができる。

今回はW杯の事例から、不都合な状況を企業への理解と信頼につなげるためのヒントを探る。

W杯では、公式スポンサーの権利を守るために、スポンサー以外の企業名や広告の露出を禁じる「クリーンスタジアム」というルールがある。会場から、関係のないロゴや看板をきれいに消してしまうという発想だ。

ここで困った立場に立たされたのが、米カリフォルニア州にある「リーバイススタジアム」だった。本来はジーンズのリーバイスが名を冠したスタジアムだが、リーバイスはW杯の公式スポンサーではなかった。

そのため大会期間中、会場名は「サンフランシスコ・ベイエリア・スタジアム」に変更され、施設の内外にある巨大な自社ロゴは、白い布で覆い隠されることになった。世界中の視線が集まるその瞬間に、外側から決められたルールによって、自分たちの名前を消されてしまったのである。

普通なら、悔しくてたまらない場面だろう。しかしリーバイスは、その制約をむしろ逆手に取った。

白い布で文字は隠れても、多くの人は、あの象徴的な「バットウィング」(コウモリの翼)のシルエットだけで、ひと目でリーバイスだと分かる。そこに目を付けた彼らは、公式の交流サイトのプロフィール画像を、スタジアムと同じ「布で覆われたロゴ」に変えてしまった。

さらに動画では「美しい(検閲済み)スタジアムで世界を歓迎!」という一言を添え、SNSで世界的に流行している「隠しても完全にバレバレな状態」を自虐的に笑う定番のジョーク音源(ミーム)を重ねたショート動画を公開した。隠されたことを、隠さない。むしろ、隠された状態そのものを、自社らしい表現に変えてしまったわけだ。

この遊び心は店舗にも広がった。あえて看板のロゴを覆ってみせる。その「覆われたロゴ」のデザインを、各地の店舗にまで使用したのである。これがまた、大きな話題になった。制約は、必ずしも企業の価値を下げるものではない。扱い方によっては、コミュニケーションの材料にもなる。そんな示唆を与えた出来事だった。

これとよく似た事例が、ケチャップでおなじみのハインツだった。同じく2026年のFIFA W杯期間中。舞台はスタジアムの記者席に置かれていた、ハインツのケチャップボトルである。

ルールに従って、このボトルのロゴも黒いテープで隠された。ところがハインツは、その「テープを貼られたボトル」の写真がじわじわ話題になっていることを、見逃さなかった。

「非公式スタジアムケチャップ」と名付け、ラベルの商品名やうたい文句を、あえて黒塗りの「検閲済み仕様」にした限定版のボトルを、実際に作って世に出したのである。リーバイスがスタジアムという大きな空間を使ったのに対し、ハインツは商品そのものを使って、手に取れる笑いを形にした。

何かを隠そうとすればするほど、かえって人の関心を集めてしまう。これは「ストライサンド効果」と呼ばれる。今回紹介した2社はこの現象を見事に味方につけ、結果として、多額の協賛金を払った公式スポンサー以上に話題をさらった。

新しい事業を立ち上げるとき。既存の事業を組み替えるとき。不祥事ではないけれど、説明のしづらい変更をするとき。価格を見直すとき。事業から手を引くと発表するとき――。

市場も顧客も、その一つ一つの判断を通して、企業の一貫性を見ている。その会社らしいか。納得できるか。言っていることと、やっていることが、ちゃんとつながっているか。

ここに違和感があると、どれだけ説明文を整えても、信頼は積み上がらない。逆に、思うようにいかない条件にぶつかったときでも、自分たちの価値観と矛盾しない形で表現できれば、むしろ企業への理解が深まることさえある。しかし、何でも同じように扱えるわけではない。

人が傷ついている事故。健康への被害。差別や、いやがらせ。情報の流出。取引先や顧客に、実際の損害が出ている問題――。こうした場面では、ユーモアはほとんどの場合、裏目に出る。今回紹介した事例がうまくいったのは、それが誰かに損害を与えた問題ではなかったからである。

まず、その出来事に、深刻な被害を受けた人がいないこと。次に、企業の姿勢として、軽やかに扱ってよいテーマであること。そして、自分たちらしい表現として、無理なく自然に見えること。この3つがそろわないなら、むやみに話題化を狙う必要はない。

そういうときに必要なのは、丁寧な説明であり、責任の所在をはっきりさせることであり、二度と起こさない手立てであり、関わった人への配慮である。ここを飛ばして「うまい見せ方」に走ると、かえって企業の価値を傷つけてしまう。

一方で、不都合ではあるけれど、誰かを深く傷つけるものではない出来事には、工夫の余地がある。例えば、価格の改定。サービス内容の変更。店舗の閉鎖。長く続けてきた商品の終了。表示の制限。企業の側からは気が重く見える出来事でも、伝え方一つで「この会社らしい」と受け止めてもらえることがある。

日本企業でいえば、赤城乳業の「ガリガリ君」の値上げが、その好例だろう。値上げは、顧客にとってうれしい話ではない。しかも、長く親しまれてきた商品ほど、価格が変わることへの心理的な抵抗は大きくなる。

そこで赤城乳業は、社員が顔を出す広告で、値上げへのお詫びと説明をした。飾りすぎず、逃げず、それでいて重くなりすぎない。長く愛されてきた商品と、会社との距離感が、そのまま伝わる対応だった。大事なのは、ただ頭を下げたことではない。顧客が残念に思う気持ちを、ちゃんと分かっている。その上で、品質を守るために価格を変える必要がある。その説明に、会社の顔が見えたことである。

制約を味方にできるかどうかは、機転やユーモアの才能の有無ではない。不都合な瞬間に出てくる一手は、その会社が平時にどんな顔で世の中と付き合ってきたか、その答え合わせだと考えられる。

だとすれば、勝負はいつも、何も起きていない日々の中にある。自分たちは、何を大切にしている会社なのか。それを言葉にして、日頃から社内で共有できているか。表面上のロゴが布やテープで隠されようとも、その企業が「どんな会社か」は、日頃から見守っている生活者の方が、ずっとよく知っているのかもしれない。

編集部注:この記事はAIを使用して作成されており、産経新聞の記事を元に、内容を変更せずにリライトしたものです。
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