
オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)上訴裁判部は22日、フィリピンのドゥテルテ前大統領による「人道に対する罪」の審理について、ICCに裁判を行う権限があるとの判断を下した。フィリピンは2019年にICCを脱退しているが、脱退前の行為については依然として国際法上の責任が問われる形となる。この判決により、組織的な民間人殺害を主導したとされる前大統領の刑事責任追及が本格化する見通しだ。
ドゥテルテ氏は南部ダバオ市長および大統領在任中の2011年から19年にかけ、「麻薬戦争」を掲げて超法規的な殺人に関与した疑いが持たれている。検察側は、広範かつ組織的な民間人への殺人や殺人未遂が行われたとして、人道に対する罪を適用した。フィリピン国内では多くの犠牲者が出ており、国際社会からは人権侵害を指摘する声が根強く上がっていた経緯がある。
事態が大きく動いたのは2025年3月で、ICCがドゥテルテ氏に対して逮捕状を発行したことが契機となった。その後、ドゥテルテ氏は国内で身柄を拘束され、ハーグのICCへと引き渡されるという歴史的な展開を見せている。弁護側はフィリピンのICC脱退を根拠に管轄権の不在を主張したが、予審裁判部はこれを退け、今回の控訴審でもその判断が支持された格好だ。
今回の司法判断において決定的な根拠となったのは、加盟国の脱退に関する国際規程の解釈である。ICC規程127条2項は、脱退は、「脱退が効力を生ずる日の前に裁判所が既に審議していた問題について審議を継続することを妨げるものではない」ことを規定します。この法理に基づき、脱退通告から1年が経過して効力が生じる前に開始された捜査や審議については、脱退後も有効であると結論付けられた。
今回の判決は、主権国家が国際裁判所から脱退することで過去の罪から逃れることはできないという強いメッセージを世界に示した。フィリピン国内では今もなお、冤罪で家族を亡くした遺族たちが真相究明と正義の実現を求め続けている。ドゥテルテ政権下で進められた強硬策の是非が、今後、国際法廷の場で厳格に裁かれることになるだろう。
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