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来たる8月21日、人間中心のAIという概念を起点に、最新の技術動向とこれからのモビリティが提供すべき価値を徹底的に議論するオンラインセミナー「人とクルマの距離と未来:フィジカルAIによる新しいUX・モビリティ」が開催される。
本セミナーに登壇するのは、株式会社博報堂DYホールディングス執行役員Chief AI Officerであり、Human-Centered AI Instituteの代表を務め、アカデミア領域にも実務領域にも詳しい森正弥氏だ。
セミナーでは、1.人間中心のAI、2.最新のAI動向:世界モデルとSim-to-Real、3.あなたの相棒(バディ)となるAI時代のUX、4.セキュリティ・プライバシーとロボタクシーの普及、5.各国の実装動向とこれからのロードマップ、6.質疑応答・対談、が予定されている。
インタビューでは、世界モデルやフィジカルAIがもたらす自動車業界の地殻変動、そして日本が目指すべきモビリティの未来について、見どころを伺った。
セミナーの冒頭で森氏が提示するのは、「人間中心のAI」という本質的なコンセプトだ。森氏は、AIの役割を単なる業務の自動化やコスト削減、量的な効率化のツールとして捉える視点に疑問を投げかける。
「今回のセミナーでは、最初に『人間中心のAI』のコンセプトを体現する特別な動画をお見せしたいと考えています。実はこの動画は、AIと当社のトップクリエイターが密接にコラボレーションして制作した映像です。AI単体でも、あるいは人間のクリエイター単体でも決して到達できなかった、両者の掛け合わせによる凄まじいクオリティが表現されています」と森氏は強調する。
この取り組みが示すのは、AIを人間の創造性を高めるための「バディ(相棒)」としていかに使いこなすか、というテーマだ。企業視点においては、組織や社員、熟練者が持つ「暗黙知」という重要な創造性をAIによってどう引き出すか、という議論に直結する。また、ユーザーや顧客の視点においては、単に「移動が早い」「快適である」といった定量的なベター(より良いもの)を追求するだけでなく、定性的なエンゲージメントや、唯一無二の「体験的なリファレンス」をいかに構築できるかが重要になると森氏は指摘する。AIと人間が共創し、計量的な次元を超えた感動を生み出すプロセスこそが、人間中心のAIの真髄だ。
次に、生成AIの進化プロセスと、フィジカルAIを支える「世界モデル」および「Sim-to-Real(シミュレーションから現実へ)」の動向をみてみよう。今回、森氏は、学術と実践の相互作用、そしてプロセス思考からエクスペリエンス思考へのシフトを表した独自のフレームワークを用いて解説する。
「ChatGPTが登場した初期、プロンプト・エンジニアリングにおいて『あなたはプロのマーケターです』『プロの数学者です』と役割を定義すると回答の精度が飛躍的に向上するという現象が起きました。これは開発者自身すら予測していなかった、実践を通じて発見されたAIの新たな可能性でした。このように、アカデミアの研究と現場の実践が相互に刺激し合うことで、AIは左上から右上へと、定量的な情報処理(プロセス)から定性的な体験(エクスペリエンス)の実現に向けてぐるりとU字を描くように進化してきました。そしてその先に見えているのが、フィジカルAIの領域です」(森氏)。
世間ではすぐに汎用人工知能(AGI)の世界が到来するかのように語られがちだが、森氏はその前に「フィジカルAI」の時代が訪れると予測する。そして、物理世界で適切にアクションを起こすフィジカルAIを実現するためには、AIが世界の構造や因果関係を集約して理解する「世界モデル」が不可欠となる。
現在、自動運転やロボティクスを牽引しているのは、画像・言語・行動を統合した「VLA(Vision-Language-Action)モデル」と呼ばれるマルチモーダルなアーキテクチャだ。NVIDIAやGoogleといった巨大テック企業が次々とプラットフォームを発表しているが、現実世界の複雑な課題に対処するには「ロボティクス×AI」だけでは足りず、ここに「シミュレーション」を掛け合わせることが極めて重要になる。
例えば、家庭用ロボットに棚から食器を取り出す学習をさせる際、物理的な環境を用意するだけでは限られたパターンの学習に留まる。しかし、仮想的なシミュレーション環境であれば、何万通りもの異なる形状の棚や食器を瞬時に生成し、ロボットに並列で試行錯誤させることが可能となる。
「シミュレーションの力を借りれば、現実の時間でわずか1週間であっても、AIはロボットとして何万年分にも相当するデータを学習できるのです」と森氏はそのスケールの違いを強調する。
クルマが単なる移動手段から、乗員の感情や文脈を理解する「頼れる相棒(バディ)」へ進化するプロセスのUXデザインを考察してみよう。
これまでの車載AIは、ルートの最適化や生活スタイルに合わせたおすすめの提案といった、ナビゲーションの延長線上の機能が中心だった。しかし最新の動向では、乗員の表情や声から感情を読み取る「エモーショナルAI」を搭載し、その時の気分に合わせて音楽のプレイリストを変えたり、空調や香りを調整したり、対話AIの話し方のトーンを変化させたりするソリューションが登場し始めている。