
カナデビア(大阪市、旧日立造船)と海外勤務中に自殺した社員の遺族が29日、大阪市内で記者会見し、長期の海外勤務者向け「健康管理マニュアル」を共同で発表した。労災事故を起こした企業が被害者側と協力して再発防止策を取りまとめるのは珍しい。
自殺したのは上田優貴さん=当時(27)。令和3年1月にタイへ渡航し、ごみ焼却発電プラントのプロジェクトを担当したが、同年4月にプラントから転落して死亡した。初の海外勤務で未経験の業務に従事したうえ、上司の叱責や帰国予定の延長が重なり、令和6年に労災認定された。
海外勤務は日本の労働関係法令の規制対象外になることがあり、企業側が労働時間を正確に把握していないケースもある。上田さんの母、直美さんは同社に再発防止策を要望し、約1年半にわたりマニュアル作成に向けた協議を進めてきた。
完成したマニュアルでは、出発前や現地着任後、帰国後の各段階で実施する健康管理方法を具体的に規定。心身に不調があれば即時帰国できる態勢を整備するほか、若手社員には指導役の社員を同行させたり、勤務時間管理を徹底したりすることを盛り込んだ。
会見で直美さんは「悲劇を繰り返さないという共通の思いで協議を重ねた」と振り返り、「海外労働者を守るスタンダードとして社会に広がることを願う」と訴えた。同社の土肥太郎専務執行役員は「実行性のある運用に努め、再発防止に全力で取り組みたい」と話した。