
コロナ禍で収入が減少した世帯が利用した「コロナ特例貸付」で、貸し出された総額1兆4431億円の45%にあたる6540億円余が「返済免除」となったことが、厚生労働省への取材でわかった。コロナ禍後の物価上昇によって、利用世帯の多くが依然として生活再建に苦しんでいるためとみられる。この制度は都道府県の社会福祉協議会が低所得世帯を主な対象として実施している「生活福祉資金貸付」の特例で、原資は国の補助金だ。
所得を問わず、コロナ禍で収入が減ったと申告した世帯は最大200万円まで借りられ、2020年3月~22年9月に計382万件の利用があった。返済の時点で住民税が非課税だったり生活保護を受給したりしていると返済が免除される仕組みで、厚労省によると25年末時点で返済免除は6540億円、生活が苦しい場合に返済を原則1年遅らせられる「猶予」は301億円、猶予の手続きをしていない「遅滞」は1715億円だった。
返済があったのは1323億円で、残る4552億円は返済時期が到来していない。25年末は24年末と比べて、免除は485億円、返済ありは376億円それぞれ増えた。全国社会福祉協議会(全社協)がまとめた検討会の報告書によると、利用世帯の職業は自営業のほか、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトといった収入が不安定な世帯が多かった。
月収は中央値が15万~16万円程度で、コロナ禍前は6割以上の世帯が月収20万円以上だったが、借入時には9割近い世帯が20万円未満に落ち込んでいたという。この貸付をめぐっては、政府の方針で迅速な資金供給が優先された半面、返済を条件とする貸し付けとしたことから、社協に返済期間の案内や連絡がとれない世帯の所在確認などが生じ、専門家からも「返済不要の給付にするべきだった」という指摘が出ている。
全社協も報告書で「大規模な社会経済活動の制限などにより困窮した人びとの支援としては、返済を条件とする貸し付けではなく、新たな給付制度の創設を図って支援するべきだった」と指摘し、国に緊急時や災害時の困窮者救済措置のあり方を検討するよう求めた。日本福祉大学社会学部の角崎洋平教授(金融福祉論)は返済免除の多さについて「生活再建が進んでいないことの表れだ」と指摘し、「次の緊急事態に備えて社協の負担軽減策を考えるとともに、新たな給付制度の創設も含め、よりよい低所得世帯の支援制度を構築するべきだ」と促している。厚労省の担当者は、コロナ特例貸付について「休業などにより収入が減少した多くの世帯の生活を下支えできた」とし、今後は「返済が進んでいない方を含め、(利用世帯の)現在の生活状況を個別に把握しながら、適切な支援が実施されるよう取り組んでいく」としている。
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