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2019年に開始した連載「Innovative Tech」では、最新論文を多数紹介してきた。今回は番外編として、過去に発表された個性的な研究論文を独自の視点で厳選・解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」を主宰する山下氏が担当し、イラストは同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛ける。
オランダのマーストリヒト大学とベルギーのアントワープ大学に所属する研究者らがPLOS Digital Healthで発表した論文「Sleep and smartphone use: Within and between-person relationships from an objective longitudinal smartphone and wearable data donation study」は、ベッドでのスマホ使用が睡眠時間を延ばす可能性があることを示した研究報告だ。
寝る前のスマホは睡眠に悪いとよく言われるが、本当にそうだろうか。これまでの研究は参加者へのアンケートに頼ることが多かったが、今回の研究では68人の参加者のApple WatchとiPhoneから14日間にわたって実際のデータを収集した。
具体的には、Apple Watchの加速度センサーなどを活用してレム睡眠、コア睡眠、深い睡眠などの睡眠ステージと総睡眠時間を測定。同時にiPhoneのスクリーンタイムのスクリーンショットから、1日の総使用時間とベッド内での使用時間を詳細に記録した。
データを調べたところ、ベッドの中でのスマホ使用時間が長い日ほど、その夜の全体の睡眠時間がわずかに長くなること(統計的には有意)が明らかになった。さらに、ベッド内での使用は翌日の総使用時間を直接増やす一方で、ベッド内使用によって延びた睡眠が翌日の総使用時間を減らすという逆方向の働きも示唆され、スマホ使用と睡眠が互いに影響し合う循環的な関係が浮かび上がった。
ただし研究チームは、睡眠時間が長くなったからといって、質の良い睡眠がとれているとは限らないと注意を促している。就寝前のスマホ使用によって睡眠の質が下がり、体が十分に休まらなかった結果として、より長い睡眠時間を必要とした可能性を指摘している。単に睡眠時間が延びたことが、健康にとってプラスなのかマイナスなのかは、さらに詳しく調べる必要がある。
また、日々の細かな変化以上に、それぞれの人が持つ日常の習慣が強い影響を与えていることも分かった。普段からスマホをよく使う人は翌日もよく使い、長く眠る人は翌日も長く眠るというように、行動のパターンは固定されていた。つまり、スマホが睡眠を邪魔するという単純なものではなく、使うタイミングや日頃の習慣が複雑に絡み合ったものである可能性がある。