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ミャンマー・ヤンゴンの静かな住宅街に佇む日本食店「角 ホーン」。40年の料理人人生を歩んだオーナー大舘さん(78歳)は、クーデターや物価高騰といった逆風の中でも店を閉めずに営業を続けている。その原動力は、利益追求ではなく、従業員や地域との深い絆にあるという。
大舘さんは若い頃から料理の道を志し、日本各地の料亭で修業を積んだ。その後、縁あってミャンマーに渡り、2000年に現在の店を開いた。当初は日本料理に馴染みの薄い現地の人々に少しずつ受け入れられるようになり、常連客も増えていった。
しかし2021年の軍事クーデター後、観光客が激減し、物資不足や急激なインフレが経営を直撃した。多くの外資系企業が撤退する中、大舘さんは「従業員を路頭に迷わせられない」と決意し、赤字を覚悟で店を開け続けている。利益より家族を守るという信念が、店の存続を支えている。
「結局は人との縁ですよ」と大舘さんは語る。地元の食材を調達する業者、店を手伝う従業員たち、そして週末には必ず訪れる常連客。一人ひとりとの信頼関係が、厳しい環境の中で希望を与えてくれるという。特に、従業員の家族が困った時には積極的に支援し、彼らからも「お父さん」と慕われている。
周囲からは「なぜ閉めないのか」と聞かれることもあるが、大舘さんの答えはいつも同じだ。「私にとって、儲けることよりも大切なものがある。この店があれば、人との縁が途切れず、みんなが集える場所を守れる。それこそが人生の豊かさです」。そんな思いが、軍政下のミャンマーで和食店を灯し続ける力となっている。