
建設業でフリーランスとして働く「一人親方」は、原則として労災保険の対象にならない。政府は実質的に雇用労働者と変わらない「偽装一人親方」の規制を強めているが、あいまいな運用がトラブルを招いている。横浜市の中川邦彦さん(55)もその一人だ。
中川さんは建設現場で天井に穴をあけるアンカー工として働いていた。2020年12月、「手にジリジリと違和感があり、おかしいなと思った」と振り返る。翌年正月明けには右手の感覚がなくなり、指先が真っ白になった。症状は両手、そして足先にまで広がり、温度変化にも敏感になった。
中川さんは月収100万円を夢見て独立したが、病気やけがで収入が激減するリスクを抱えていた。フリーランスは自己裁量で働ける反面、社会保険料は自己負担であり、けがをしても労災保険が適用されない。中川さんは労災認定を申請したが、拒否されたという。
政府は2018年から偽装一人親方の是正を進めており、2022年には建設業でも適用範囲を拡大した。しかし、一人親方かどうかの判断基準は曖昧で、現場によって扱いが異なる。中川さんのようなケースは珍しくなく、専門家は「制度の隙間を埋める必要がある」と指摘する。
「一人親方」という働き方は、収入が増える可能性がある一方で、社会保障の脆弱さが露呈している。中川さんは現在も治療を続けながら、労災認定の見直しを求めている。建設業界全体で、働き方の多様性と安全網の両立が問われている。
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