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中国では毎年3月に開かれる全国人民代表大会(全人代)と国政助言機関の中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)を合わせて「両会」と呼ぶ。両会期間中、習近平国家主席や李克強首相ら指導部メンバー以上に目立つ政協委員がいる。それが米プロバスケットボールNBAの元スター選手、姚明(ヤオ・ミン)氏(35)だ。中国スポーツ界のレジェンドは、実はスポーツ界きっての頭脳の持ち主でもある。
229センチの大きな体にスーツをまとった姚氏が北京の人民大会堂に姿を現すと、否応なく人だかりができる。政協委員となって4年目。身長や現役時代の栄光以上に、今やその言葉の存在感が増している。
2008年、広告塔として政協委員に選ばれたアテネ五輪陸上男子110メートルハードルの金メダリスト、劉翔氏が会議を欠席し、「(スポーツ選手は)参加しても何も言えない」との批判が浴びせられた。しかし、現役当時、米国の知能指数(IQ)テストサイトのデータでNBA選手最高のIQ132を記録したと中国メディアが伝える姚氏は、新任委員として臨んだ2013年からスポーツ業界別分科会などで積極的に発言した。
「最初の年は何を着ていくのがふさわしいか考えていた」と謙遜しつつ、「スポーツは教育の一部分だ。より速く、より高く、より強くという五輪精神は自分に対する絶え間ない挑戦だ。どのような成績を残すかばかりではなく、より思考を拡大すべきだ。最も重要なのは人間の素質の育成だ」などと、スポーツと教育の関連性を強調した。
2014年には「競技開催の審査を廃止し、スポーツ・マーケットを活性化する」ことを提案。国務院の「スポーツ産業の発展を加速し、スポーツ消費を促進することについての若干の意見」に盛り込まれた。
また、「10年後には、肥満が現在の大気汚染と同じように、多くの中国人に悪影響を与えているかもしれない」と中国で拡大する肥満を警告する発言も、中国メディアに大きく取り上げられた。
2015年に姚氏が提案したのは、中学・高校での体育の授業の改革だった。姚氏らは約2カ月をかけて上海の高校17校で実地調査を行い、データを集めた。授業時間の変更や、それぞれの種目を専門の教師が教えること、児童・生徒に自分で参加する種目を選ばせることなどを提案し、「スポーツは好きだが体育の授業は嫌い」という現状の打破を狙った。
また、サッカー好きで知られる習近平国家主席の肝いりで強化策が国家プロジェクトとなり、中国全土の学校で盛んになっているサッカーに対し、「バスケットボール人として、とても嫉妬している」と笑わせた上で、「バスケットボールでも、そうした計画ができるよう希望している」と述べている。
李首相は今年の全人代で行った政府活動報告の中で、「今年度は、小康社会の全面的完成に向けた決勝段階の最初の年であり、構造的改革の推進における堅塁攻略の年でもある」と述べた。姚氏が今年、スポーツ業界別分科会で訴えた提言のキーワードは、政府の方針に沿った「小康社会」「改革」だった。
「私の小康社会に対する理解は、食事や衣服だけではなく、精神レベルだ。一般大衆の文化やスポーツに対して求める幸福感を体現することだ」-。中国国営新華社通信によると、姚氏は、中国国民のスポーツに対する関心は、今や五輪や世界選手権といった大規模競技大会に限られず、多くの人々がマラソンなどの社会的なイベントに自ら参加していると説明。「中国のスポーツはもっともよい時代を迎えている。改革には時期というものがある。もし我々がその時期をしっかりとつかまなければ」と主張した。
一方で姚氏は、「スポーツ改革のカギはわれわれが踏み出せるかどうかにある。そうでなければ、空想に留まってしまう。スポーツ改革の窓が開いている時間はとても短い。1年ほどだ。もし1年、われわれが何も踏み出せなければ、またふりだしに戻ってしまう」と、改革が急務であることを訴えている。
姚氏の考えでは、中国スポーツ界に求められているのは、管理部門と実務部門の分離だ。中国のスポーツ界では、幹部による現場への干渉が横行しており、しばしば障害となっている。姚氏は「職責を明確に分けて、市場化を推進するべきだ」と主張。中国スポーツ界を牛耳る国家体育総局の幹部たちに、レジェンドの言葉はどう響くだろうか…。(北京 川越一)