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田園地帯に現れる倉庫のような建物。歯応えと味わいのあるうどんを提供する「武蔵野うどん ざいごや 三吉」(埼玉県行田市)。うどんの種類が多く麵の量を選べるため、昼時にはおなかをすかせた来店者でにぎわう。店の奥には店主が部品を自作した競技用自転車が飾られ、自転車好きな人も楽しめる。
テーブルに着くと店主のただし書きがある。「武蔵野うどんの風味豊かな麺はゴリゴリワシワシです…」ならば、冷たい麺を冷たい汁で味わうのが常道。みそを冷たい汁にすりこみキュウリなどを入れた埼玉県中西部の郷土料理「すったてうどん」(小盛、400グラム、1080円)を注文。大盛(250円増し)は700グラムもある。
うどんだけを口に入れる。ワシワシとした食感とほんわり甘い味わいがある。キュウリやミョウガをうどんにからめ汁につける。八丁味噌を使った汁とミョウガのハーモニーが絶妙で暑い季節は特に食欲が進みそうだ。
コシのあるうどんを作る秘訣を店主の池田陽一さん(65)に尋ねると、「詳細は秘密ですが、粉に水をかけるときに特別な工夫をしています」と明かす。コシの強いうどんが苦手な人には麺の熱盛りができる。ほとんどのメニューがつけ汁も麺も冷たいうどんだが、温かいのを食べたい人には「カレーうどん」の「かけ」がある。
池田さんは、父親が青果店を営み自身も60歳まで同じ店で働いていた。店が倉庫のように感じるのは、大きな青果店の跡地を利用したから。厨房の前にぶらさがる品書きも、青果店の値札っぽい感じだ。
うどん好きだった池田さんは60歳を超え「やりたいことをやろう」と発起。青果店をたたみ、埼玉県川島町にある名店の「本手打ちうどん 庄司」で修業し、令和6年4月に店をオープンした。店名は田舎という意味の「ざいご」に「店良し、客良し、世間良し」の思いを込めて名付けた。
修業した人だけに使うことを許される小麦粉があり他の粉とブレンドすることはOKだが、池田さん自身は、「この粉100%で極めることが正解なんじゃないか」と決めた。それを独特の水の混ぜ方と熟成で武蔵野うどんのコシを出す。
一方、店内で目を引くのが、壁面のショーケースにルネ・エルス(仏)など外国の著名自転車ブランドの自転車が何台も展示されていることだ。実は池田さんはサイクリストで、展示した自転車には自分が走りやすいように変速機を自作した車体もある。そんなモノ作りへの真摯な姿勢がうどん作りにも反映しているなとうどんを食して感じた。(昌林龍一)