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物価上昇が続くなか、都市部の賃貸物件の家賃も上がり続けている。契約更新のたびに値上げを告げられ、戸惑いを感じる入居者もいる。トランプ米政権の関税政策で景気の先行きは不透明さを増し、賃料にも影響が広がる可能性がある。値上げの申し出を受けた際、交渉を円滑に進めるにはどうすればよいのか。専門家に聞いた。
「家賃を1万円上げるという通知が届いたので驚きました。10年以上も住んできて、値上げを要求されたのは初めてでした」
こう語るのは、東京都中野区の2LDKマンションに夫と中学1年生の長女と住む40代の女性会社員だ。昨年10月の契約更新を前に値上げの申し入れがあったという。
住み慣れた家を離れたくなかった女性は、「引っ越しはせずに、貸主の要求を『丸のみ』にしました。後で交渉できたかもしれないと思うようになり、後悔しています」と振り返った。
都市部では家賃の値上がりが続く。不動産・住宅情報サイト「ライフルホームズ」の運営会社の広報担当者は、「特に東京や大阪などの都市部では、マンションの賃料の値上がり傾向が顕著」と話す。同社サイトの東京23区の掲載物件をみると、令和6年のファミリー向けマンションの平均賃料は3年平均の約1.3倍に達した。ライフルホームズ総研の中山登志朗(としあき)副所長は「この数年、ロシアのウクライナ侵攻などの影響で輸入資材の価格が高騰。インフレが継続する中、賃料だけを抑えるのは難しくなった」と解説する。
「交渉の結果、値上げ幅を抑えられたというケースもあります。値上げの通知が届いたら、まず貸主に根拠を聞き、感情的にならずに具体的に話し合いましょう」
こう話すのは、賃貸物件のトラブルに詳しい上原総合法律事務所長で弁護士の上原幹男さんだ。根拠を聞く理由は「互いに納得できる交渉をするため」。
その際、押さえておきたいのが「借地借家法」第32条だ。貸主が賃料の値上げを借り主に申し入れることができる条件が明記されている。値上げを伝えられたら、借り主はどの条件に当てはまるかを貸主に確かめ、その上で値上げ額が妥当かを交渉するのがよい。
値上げ額だけでなく、開始時期なども交渉材料になり得る。上原さんは「そのままでは納得できない場合は、契約書に特約事項を付記することもできます」と説明する。すぐに増額に応じられないときは、最初の半年は5千円、その後は1万円…などと、段階的値上げで合意し、特約事項に加える手もある。
「貸主は収入の見通しを早めに立てておきたいと考えます。最初は増額が少なくても、将来的に大幅にアップするという提案を魅力的に感じる貸主もいます」と上原さん。
古くなったエアコンの修繕などの設備投資が経費として認められ、貸主の節税につながるパターンもある。値上げの見返りに修繕を求めたら、受け入れられるかもしれない。
借地借家法では賃料値上げの申し入れタイミングに関する定めがなく、32条の条件に該当すれば、貸主からいつ通知がきてもおかしくはない。逆に契約期間中に、土地や建物の価格が下落すれば、借り主から貸主に賃料減額を交渉することもできるという。
申し入れがあれば「まずは交渉相手の立場になって考えてみるのがポイント」と上原さん。相手が膝を打つような提案を編み出したい。(竹中文)