
開幕から1カ月、プロ野球の現場では本塁打の量産という「異変」が起きている。23日現在の総本塁打数は184本に達し、シーズン換算では昨季を大幅に上回る1196本ペースを記録している。現場の監督や選手からも「今年のボールは飛ぶ」という声が異口同音に上がっている。この違和感の正体を探ると、投高打低を是正しようとするNPBの明確な意図が浮かび上がってきた。
球団関係者から入手した極秘情報によれば、昨年8月4日の実行委員会において重大な決断が下されていた。そこでは「投高打低傾向が数年来続いているため反発係数の基準値の幅の中で最高値を目指すことを決定し、統一球を製造しているミズノ社に指示する」という方針が明確に示された。さらに昨年11月の同委員会では、日本野球機構(NPB)の中村勝彦事務局長が「ミズノ社で反発係数の範囲内でできるだけ高い数値にとテストしている」と発言している。メーカーのミズノ社からも「反発係数を高めるために毛糸を強く巻くことでよりボールを硬くする」との具体的な手法が報告されており、数値の引き上げは既定路線だった。
実戦配備に向けた調整は、今季開幕直前まで入念に行われていた。今年3月の12球団会議では、「ミズノ社から目標値に近づくように規則の範囲内で毛糸の量を調整した」という生々しい報告が行われている。これに付随して「シーズン開幕頃は昨年9月に検査した比較的反発係数の高いボールを使用予定」といった具体的な運用計画も共有されていた。こうした舞台裏の動きは、打撃戦を望むプロ野球界の強い意志を反映している。
かつて統一球を巡っては、2013年に仕様を秘密裏に変更していたことが発覚し、野球界を揺るがす大スキャンダルへと発展した経緯がある。12球団側には「投手戦ばかりの味気ない試合が増え、球場収入や放映権料にも悪影響を及ぼす」という切実な危機感があり、今回の是正もファンのニーズに応える側面は否定できない。しかし、ボールの規格変更は選手の記録や野球の質に直結する重大な事案である。それだけに、情報の透明性を確保することは組織としての義務ではないか。
驚くべきは、現場への説明責任を果たすべきNPBの対応だ。4月6日の実行委員会後、中村勝彦事務局長は報道陣に対し「今年のボールは飛ぶのでは?」と問われ、「何か変更しているということはない。飛ばないときは反発係数を変えた方がいいんじゃないかと思われる方もいらっしゃるけど、選手も記録の商売。厳格な検査を行い、定められた基準値の範囲内に収まっている。意図的な仕様変更などは一切ない」と言い切った。内部で具体的な数値を議論しながら、公の場では一切を否定する姿勢は、かつての不祥事から何も学んでいないと言わざるを得ない。NPBは再び同じ轍を踏もうとしている。
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