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「ゾンビ回収婦」で第175回芥川賞の受賞が決まった小砂川(こさがわ)チトさん(36)は15日夜、東京都内の会場で受賞者記者会見に臨んだ。一問一答は以下の通り。
「ちょっと今、胸がいっぱいで、人生にこういうことが起こることもあるんだなという。頭が真っ白で、ありがとうございます」
--現実世界とVRの世界をないまぜにした小説だが、今ご自身はどの空間にいるのか
--父親がプレイしていたホラーゲームを見ていたことが、アイデアにつながったと伺ったが、受賞は父に知らせたか
「変な話ですけど伝えたのは、本が売れたら家のローンを払いたいとずっと言っていて、そういう話ではなくて、受賞したことを伝えました。『信じられない、でもお前はすごい子だ』と言ってくれた」
--これからの小説が生み出す虚構世界は、どのように変わっていくと思うか
「変わっていくんでしょうかね。活字を読まれない方も増えているとよく聞きますけども。古いメディアになっていったとしても、紙の本のニーズはなくはならない。時代時代で取り扱うテーマは変化するでしょうが、ドンと構えていていいと思う」
--講評では「虚構を立ち上げていく意志の強さ」が評価されていた
「そう評価してもらえたなんて光栄です。これまで見聞きしてきたゲームの寄せ集めのような、この(作品に登場する)VR自体も自分の中で一から作っていかなければならない、よっこらせという立ち上げ方、そのあたりも楽しんでいました」
--主人公が入り込んだ先がノンプレイアブルキャラクター(NPC)だった。これはどうして
「一般的にはゲームをするときに主人公のキャラクターになると思うのですが、主人公の現実世界での生き方がNPC然としていて、その鬱屈を抱えていたので、VRに入ったときにも、NPCにはまり込んでしまう皮肉ということで、そういう設定にしました」
「一応、取材のつもりで購入して、それは観光地を歩けるというものだったけど、VR酔いといいますか、2~3分で気持ち悪くなってしまった」
「デビュー以降、岩手の書店さんですとか、いろんな場所で自分で想像していた以上に、あたたかく応援していただくことがたびたびありまして、本当にこんなに応援していただけると思っていなかったので、うれしく、ありがたく思っております。今後とも、またすぐ帰りたいと思っているので、よろしくお願いいたします」
--ご自身にとってはチャレンジした作品ということだったが、この作品で芥川賞を取ったことについてのご感想を
「タイトルにそもそもゾンビと入ってしまっているので、もともと、ふざけすぎたのかなという思いはあり、怒られないかなと思っていて、候補になったときもいいのかなと考えながらでした。個人的には1作目、2作目、3作目ときまして、1作目からどんどん純文学的なものから遠のいてきたと思っていたんです。今回受賞したことについては半信半疑で、『いいのかしら』という気持ちがございます」
「ここまでの3作品でも心がけてきたことですが、純文学というジャンルで書かせていただいているわけですが、かっこよさとどこかにかわいらしさと、ちょっと文学としては人懐こい作品になってくれればいいなと思っているので、次の作品も同じように作れたらいいなと思っています」
「奪われるかもしれないですけど、個人としては、そこはわりと、作品の主人公と同じように比較的どうでもいいかなと思っていることでありまして、AIがいくら上手に面白い小説を書いてきたとしても、じゃあいいやと小説を書くのをやめてしまうわけではないので、まだ自分が作りたいと思ううちは、作ってきたいと思います」
「タイトルは3作とも、パソコンで仮のタイトルをつけたものを基本的にはそのまま一部を使っています。今回もゾンビというタイトルで編集さんとプロジェクトを進めてきたので、それを加えてタイトルにしました」
「私の場合はすごく狭い世界で小さい暮らしをしているのが好きなのですが、何もない平和といいますか、小さい暮らしの中で、誰かが書いた本を読んだりゲームをしたり、そういう形で世の中をちょっと隅っこの暗いところから眺めている時間、そこでぐずぐず考えている時間が一定程度溜まると、虚構のようなものとしてアウトプットしたいという欲が出てくるのだと思います」
--受賞の連絡を受けたのはどういうシチュエーションで、どういう気持ちだったか
「講談社の広々としたラウンジで営業さんたちと待たせていただいていて、もう2回、落選しているので、落選慣れしていて、そのつもりで待たせていただいていました」
「毎回、1、2週間前になると生きた心地がしない時間を過ごしていたので、今回3回目でこの場にいることが、かなり信じられない」
--AIに過剰適応する時代へのアイロニカルな批評性という意図はあったのか
「そんな大層なことは考えていないんですけど、あんまり今の世の中、批評しようと思っていない。思いつくままにと思っていたので、アイロニカルな批評性、そんな上等なものではないです」
「あんまり信用はしきっていないのですけど。いろいろあるかもしれないですけど、まあまあ何とかなるんじゃないか、くらいのスタンスでいます」