
将棋の第84期名人戦七番勝負第2局は4月26日、青森市の「ホテル青森」で2日目が指し継がれ、藤井聡太名人が挑戦者の糸谷哲郎九段に89手で勝利を収めた。藤井名人はこれでシリーズ成績を2勝0敗とし、名人4連覇に向けて大きく前進した。立会人の行方尚史九段らが見守る中、終始冷静な指し回しを見せた名人が、糸谷九段の力戦を押し切る形となった。夕方の休憩明け、糸谷九段が投了を告げると、会場には静寂と緊張感が漂った。
本局の展開について、副立会人の松尾歩八段は「珍しい展開になって、序盤からどうなるか読みにくい将棋だった。対局者の読みが分かりにくかったが、感想戦を聞いてみると、なるほどなあと。気づかないことが多く、勉強になった」と振り返った。さらに松尾八段は、「後手(糸谷九段)がこうやっていたら戦えていたという手が、感想戦では出てこなかった」とも指摘し、藤井名人の盤石な攻めを評価した。序盤から中盤にかけて、藤井名人が主導権を握り続ける展開が続いたようだ。
終局後、藤井名人は「▲2五飛(11手目)からの指し方は際どいところで、その後も形勢判断や構想の立て方が難しい局面が多かった。1筋からの攻めで流れは悪くないと感じていた。▲2七角(61手目)と合わせて攻めていけそうな形となり、少し指しやすくなった。次も一手一手しっかりと考えて、いい将棋が指せるように頑張りたい。」と語り、次局への意気込みを見せた。冷静に自身の指し手を分析する姿には、王者の風格が漂っていた。一方、敗れた糸谷九段は「序盤からあまり見たことのない形にできたと思ったが、中盤でバランスをとりきれず、押される展開になってしまった。中央を重視しすぎる悪い癖が出たかもしれない。金銀をもう少し展開できるようにしたかった。連敗したが、3局目以降も気持ちを込めて一局一局指していきたい。」と悔しさを滲ませた。
対局中には青森ならではの「勝負めし」も注目を集め、両対局者のこだわりが垣間見えた。藤井名人は地元のブランド牛「倉石牛」を使用した「黒毛和牛 焼肉弁当」を、糸谷九段は青森の県魚であるヒラメを使った「鮃喰(ひらめく)カツサンド」を注文して英気を養った。また、検討室には糸谷九段の兄弟子である山崎隆之九段も姿を見せ、青森入りの理由を尋ねられると「行きたい旅行先の一つだったんです」とコメントして周囲を和ませる場面もあった。地元ファンが集まった大盤解説会も、500人近い来場者で熱気に包まれていた。
解説を務めた小山怜央四段は、登壇前に「人数がさらに多いということで、(来て下さった将棋ファンの)皆さんの力を借りられる。心を強く持って、臨みたいと思います」と話し、熱心なファンを前に丁寧な解説を披露した。対局は藤井名人が長考の末に放った▲1五銀などの強手が決め手となり、糸谷九段の粘りを許さなかった。検討室でこの手を見た松尾八段は「1秒も考えてませんでした」と驚きを隠せない様子であった。第3局以降、糸谷九段がどのように巻き返すのか、将棋界の注目はさらに高まっている。
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