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「新卒の若手がAIで作った資料を持ってきた。スライド構成も、データの引用も、文章のロジックも一見整っている。でも、『なぜこう作ったのか』と聞いた瞬間、彼はしばらく黙った。10秒、20秒。返ってきたのは、『AIに聞いたほうが早いと思って』という言葉だった」——ある管理職の証言は、職場で起きている変化の本質を端的に示している。
この話は決して特殊な事例ではない。職場からは「資料はよくできているが、なぜこの構成にしたのかと聞くと答えに詰まる」「AIに作らせたのに、毎回自分が手直ししないと出せない」「若手が指示待ちになった気がする」「失敗から学ばせる場面が減った」など、AIの浸透によって若手の思考力が低下しているという懸念が、多くの管理職の間で共通して語られている。
実際、米スタンフォード大学の2025年の研究によれば、AIで代替されやすい職種では22~25歳の若手雇用が13%減少した一方、シニア層は6~9%増加した。また、日経ビジネスとリクルートマネジメントソリューションズの共同調査では、人事担当者の約4割が「5年後、新卒採用の比率は減る」と回答している。
AIによって作業がコモディティ化し、若手採用枠も縮小に向かう中、経営課題として浮上するのは、AIと協働する若手をいかに育成するかという問題だ。単なるツールとしてAIを使いこなすだけでなく、自ら考える力をどう維持・強化するかが問われている。
技術の進化が人間の能力を奪うという議論は、決して新しいものではない。電卓が普及した際には「暗算ができなくなる」、検索エンジンが登場した時には「記憶力が衰える」と、それぞれの時代に同様の危惧が唱えられてきた。AI時代に求められるのは、こうした歴史的な教訓を踏まえた、新たな人材育成の枠組みである。