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歴史ある車名「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から劇的な進化を遂げた高性能スポーツカーだ。そのオープントップ版の走りはいかなるものか。日本発売を前に、フェラーリ通の西川淳がテネリフェ島で試乗した。
速い。とてつもなく速い。それは走り出す前から分かっていた。スペイン・テネリフェ島まで24時間かけて赴き、849テスタロッサ・スパイダーを半日堪能した結論は「クーペと同様」である。
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SF90シリーズの後継であり、マラネッロの量産シリーズにおけるスポーツモデルの頂点が849テスタロッサだ。2025年9月にクーペとスパイダーが同時発表されたが、生産立ち上がりの時間差でスパイダーの試乗は半年遅れとなった。待たされたというより、焦らされた感覚だ。
最新のテスタロッサは量産フェラーリの顔を持つが、もはやハイパーカーだ。V8ツインターボにフロント2基+リア1基の電気モーターを加え、システム最高出力は1050PS。スパイダーの日本価格は7000万円超で、SF90スパイダー比1000万円高いが、為替の影響でグローバルには安い部類に入る。高いけれど、安い。
久しぶりにスタイリングを語りたくなるフェラーリだ。試乗車はすべてシルバー×レッドで、シンプルにかっこいい。SF90が従来のマラネッロ製リアミドカーデザインの文法を踏襲したのに対し、849は全面的に新しい。F80や12チリンドリとの同時代性を漂わせつつ、シリーズモデルとしての現実味を加えた佇まいだ。
クーペとスパイダーは同時開発。リトラクタブルハードトップの開閉システムはSF90スパイダーと基本的に同じ。ウィンドウ形状をクーペと変えることで、オープン時の空力性能をクーペ並みに整えた。
乗る前から結論は見えていた。クーペは国内外でテスト済みで、SF90時代のクーペとスパイダーの関係も熟知している。ならば849でもスパイダーはクーペとほとんど変わらないはず。実際そうだった。ルーフが開く分、こちらがおいしい。プラス約600万円は高いか? この世界では誤差の範囲だ。
ドアを開けるだけで気分が盛り上がる。開いたドアの断面が美しいからだ。ドアの縁に見とれることは滅多にない。先代テスタロッサ以来かもしれない。1980年代のテスタロッサには、マラネッロが一台だけ作ったスペシャルスパイダーがあり、その個体もシルバーだった。
オブジェのようなドアを閉め、コックピットに収まる。近年のフェラーリは“欲しくなる内装”を作るのが本当に上手くなった。デジタル化されたステアリングホイールは使い勝手も向上し、マニュアル時代のシフトゲートを思わせるギアスイッチのベースは宙に浮いたように置かれ、ユニークだ。こうした演出が所有欲を掻き立てる。走り出す前から気に入ってしまう。
始動は静か。バッテリー残量が十分ならV8は眠ったまま。フェラーリなのにエンジンがかからない不思議な感覚。駐車場からEVモードでそっと出ると、前輪がモーター駆動される。音のないフェラーリも意外に悪くない。
早朝の港町を静かに抜ける。フェラーリなのに静かなので、早起きの漁師たちが不思議そうな顔で見つめる。いつもと違う優越感に浸れる。道が開けたところでドライブモードを「レース」にすると、瞬時にV8が目覚めた。駆動はエンジン主体へ移り、背後で心地よいサウンドが奏でられる。
まずはリアの垂直ウィンドウだけを下げた。室内の快適性や剛性感はクーペと変わらないのに、リアから勇ましいサウンドだけが侵入する。決して爆音ではないがちょうどいい。この状態でのドライブが一番贅沢だ。
せっかくのスパイダーなので、速度を45km/hまで落としハードトップを開けた。14秒でルーフは収まり、初夏の日差しが室内に降り注ぐ。低速域ではわずかなきしみ音があったが、速度が上がると気にならなくなった。風の巻き込みも想像より少ない。計算されたトノカバーブリッジと特許構造のウインドキャッチャーが効いているのだろう。ただし頭頂の髪は盛大に乱れる。それを気持ちいいと思えない人は、そもそもオープンカーに乗る資格はない。
誰もいないカントリーロードで全開加速を試した。もう笑うほかない。SF90でさえ今なお十分に速いのだ。それを超えるスペックの849に不満などあるものか。
感心したのは速さそのものではなく、速さの質だ。SF90にはスペースシップに乗せられたようなふわっとした速さがあり、それが少し怖かった。対して849は、路面とのつながりをしっかり感じさせたまま加速する。フロントモーターの存在を意識させず、コーナリング時のフロントの入り方もクリアで正確。RWDほどではないが、フロントモーターの気配は見事に消されていた。
ブレーキフィールの良さも評価したい。回生を含め裏側では相当な制御が働いているはずだが、踏み応えは常に素直で潔い。強く踏めば強く効き、少し抜けばうまく抜ける。減速そのものを楽しめるブレーキがあってこそ、ウルトラ加速が生きる。
849テスタロッサ・スパイダーの魅力は、クーペとほぼ同等の剛性感を保ちながら、空という大いなる余白を与えてくれること。空が近く、音を肌でも感じ、速度感も体になじむ。SF90が未来から届いた実験的なスーパーカーなら、849は未来をこちら側へ引き寄せたモデルだ。速さは常識外れだが、怖さより先に信頼がくる。そこが大きな違いだ。
街中を静かに走り、港沿いで空を感じ、ワインディングロードで本気を見せる。望めばアセットフィオラノ仕様でサーキットも楽しめる。つまり849テスタロッサ・スパイダーは、ハイパーカー級の速さを持ちながら、日常と非日常をさらりとまたぐスーパーオープンだ。
ボディーサイズ:全長4718×全幅1999×全高1186mm、ホイールベース2650mm、車重1660kg(オプション選択車両の乾燥重量)、駆動方式4WD、エンジン4リッターV8 DOHC 32バルブツインターボ、モーター交流同期電動機、トランスミッション8段AT、エンジン最高出力830PS/7500rpm、最大トルク842N・m/6500rpm、モーター最高出力220PS(3基合計)、システム最高出力1050PS、タイヤ前265/35ZR20後325/30ZR20(ピレリPゼロR)、ハイブリッド燃料消費率11.6リッター/100km、EV走行距離25km、交流電力量消費率99wh/km、価格7027万円。テスト車年式2026年型、ロードインプレッション。先に登場したB7の78kWhに対し控えめな55kWh…フェラーリはマニュアルの操作感とDCTの利点を追求。マツダはロードスター(ND型)を…ホンダはN-BOXをマイナーチェンジし7月17日に…