
ソウル中央地裁で24日、北朝鮮の挑発を誘発する目的で平壌に軍用ドローンを飛ばすよう軍幹部に指示したとして、一般利敵罪などに問われた韓国の前大統領、尹錫悦被告の公判が開かれた。特別検察はこの日、国家の根幹を揺るがす極めて重大な事案であるとして、尹被告に対して懲役30年を求刑した。検察側は論告の中で、被告の一連の行為が朝鮮半島の緊張を不必要に高め、国民の安全を危機に晒したことを厳しく指摘している。法廷には多くの報道陣や関係者が詰めかけ、かつての最高権力者に対する峻烈な求刑を静まり返った様子で見守った。
今回の公判の争点となった一般利敵罪は、国の軍事上の利益を害したり、敵側に軍事上の利益を与えたりした場合に適用される重い罪だ。特別検察は「国家の安全保障に対する実質的な危害が生じ、軍事的利益が著しく損なわれた」と断じ、被告の刑事責任の重さを強調した。北朝鮮という極めて敏感な対象を政治的に利用した今回の事件は、国内の混乱に留まらず国際的な影響を及ぼしている。検察は大統領という地位にありながら法を逸脱した行為に及んだことの深刻さを、法廷で改めて訴えた。
検察側の見立てによれば、尹被告は2024年10月ごろ、非常戒厳を宣布するための条件を人為的に作り出そうとしていたという。具体的には、いわゆる「戦時などの国家非常事態」という状況を演出するために北朝鮮へ無人機を複数回飛ばし、南北間の軍事的緊張を意図的に煽ったとみられている。求刑にあたって、検察側は「政治的反対勢力を排除し、権力を独占・維持するために行った反国家・反国民的犯罪だ」と激しい言葉で非難した。自らの権力維持という私的な動機が、国家全体の安全保障を危うくしたという構図だ。
また、同じく一般利敵罪に問われている前国防相の金龍顕被告に対しても、検察は懲役25年という重い刑を求刑した。金被告は大統領の腹心として軍を動かし、無人機派遣などの具体的な計画を主導した疑いが持たれている。国防の要職にある人物が国家の安全を脅かす行為に加担したことの是非も、今回の裁判では大きな論点となった。検察は、軍の指揮系統が政治的な目的で悪用された点についても、民主主義の根幹を揺るがすものとして厳しい評価を下している。
尹被告を巡っては、ソウル中央地裁が今年2月、非常戒厳の宣布を巡る内乱首謀罪ですでに無期懲役の判決を言い渡している。今回の一般利敵罪の公判は、前政権の崩壊を決定づけた一連の疑惑をさらに解明する極めて重要な手続きとなる。かつての国家指導者が相次いで重罪に問われるという異例の事態に、韓国国内では驚きと失望の声が広がっている。今後の地裁による判決が、韓国の民主主義と法治主義の再生にどのような影響を与えるか、国内外が固唾を呑んで注視している。
No Comments